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経口内視鏡vs経鼻内視鏡

経鼻内視鏡の現状

経鼻内視鏡は従来の経口内視鏡よりも細く患者さんへの苦痛、負担が少ないとして2000年以降急速に普及して、今では胃の内視鏡検査の相当な割合を占めてきています。新しい検査法にはよくあることですが、そのメリットのみが強調されて、患者さんのみならずそれを用いる医師側にもそのデメリットが正しく理解されてないという事が多々あります。
経鼻内視鏡と経口内視鏡を全く同じものと考えている人も多いと思いますので、その違いについて詳説したいと思います。

経鼻内視鏡のメリット

経鼻内視鏡のメリットはただ一点、内視鏡が細く患者さんの苦痛、負担が少なくなる事のみです。経鼻内視鏡は大体太さが5~6mm、経口内視鏡だと施設によって差はありますが、7~10mmくらいで、ちなみに当クリニックで使用している内視鏡は7~8mmくらいで経鼻内視鏡とは2mm程度の差です。経鼻内視鏡といってものどを通らないで胃の中に入る訳ではなく、下咽頭(物を飲み込む所)までの通り道が違うだけで、のどを通る事やのどを通った後は一緒です。一般に経口内視鏡の場合は舌根部に内視鏡が当たって嘔吐反射が誘発されると言われていますが、マウスピースの改良、のどの麻酔の量の調節で当クリニックでは下咽頭から食道入口部の通過時に嘔吐反射が出る方はいても舌根部で反射が出る方はほとんどいません。
また、日本消化器内視鏡学会で行われた検討では経鼻内視鏡で苦痛が少ないのは経鼻からというルートの問題ではなく、内視鏡自体の細さによるものであるとの報告もありました。つまり、経鼻内視鏡用の細い内視鏡を口から入れても経鼻内視鏡と同様に苦痛は少ないという事で、実際そのような方法で行っている施設もあります。
経鼻内視鏡のメリットとして検査中に会話ができるという事をあげている人もいますが、会話ができなくても検査上の支障は全くありません。

経鼻内視鏡のデメリット

前述した内視鏡の太さの差というのは内視鏡の性能には大きく関わり、内視鏡の先端に装着されているCCDカメラの解像度、操作性、視野角(観察できる角度)、胃の中で出す光の強さなど犠牲にした上で細くなっています。また、細くなっているために鉗子孔(病変があった時に組織を採取するための道具が通る部分)が細くて十分な組織が採れなかったり、送気孔が細いために胃の中を膨らませるのに時間がかかり検査時間が長くなるという難点もあります。近年は内視鏡メーカーの努力で性能面の改善はされてきていますが、トータルの観察力という点では従来の経口内視鏡には劣る事は否めません。
その観察という事に関して2013年の消化器内視鏡の専門誌(貝瀬 満:消化器内視鏡 25巻 10号)にわれわれ内視鏡医にとっても衝撃的な論文が掲載されていました。それは早期胃がんの見逃しがどの程度起きているかという内視鏡診断能の検討で、すでに病変がある事がわかっている患者さんを対象に、その情報を知らされていない2名の日本消化器内視鏡学会認定消化器内視鏡専門医が同一検査日に別々に経口内視鏡、経鼻内視鏡を用いて内視鏡診断を行い、早期胃がんの存在診断能を比較検討したものです。その結果、経口内視鏡では22%、経鼻内視鏡では何とその約2倍の41.5%の早期胃がんの見逃しがありました。内視鏡専門医が施行してもこのような結果でしたので、非専門医が施行している市中病院、診療所レベルでは経鼻内視鏡の検査数の増加に伴い、見逃し例の増加が容易に予想されます。特殊なスキルス性の胃がん以外は1年以内に内視鏡を受けて異常がなかったのに、その後の検査で進行がんが見つかった場合は見逃し例と考えてもいいでしょう。
実際の消化器内視鏡の臨床現場では経鼻内視鏡は苦痛の軽減目的に主に開業医を中心に普及しており、専門性をもって内視鏡を行っている施設では患者さんからの強い希望があれば経鼻内視鏡を施行することはあっても、基本的には経口内視鏡で施行している施設がほとんどである事実からも、その診断・観察力の違いは明白だと思われます。
また、経鼻ルートに伴う特有の事象としては鼻とのどの両方に麻酔をしなければならない点、検査後に鼻痛や鼻出血が起きたり、100人に1人くらいは鼻から挿入できない人がいると言われています。

それでも経鼻内視鏡で受けたい人へ

当クリニックではこれまでに述べたような理由から経鼻内視鏡は導入していませんが、経口内視鏡はとってもつらくて受けられないので、上記のデメリットを理解した上、どうしても経鼻内視鏡を受けたい方に経鼻内視鏡を受ける施設選びのポイントをお教えします。
まず施行医が経口内視鏡の十分な経験がある医師である事です。経鼻内視鏡は医師にとっては挿入性は良くても操作が難しいために十分な観察は難しいという矛盾をかかえています。内視鏡検査の十分な経験はない医師(場合によっては経口内視鏡の施行経験が全くない医師)にでも簡単に挿入する事ができるために施行する医師側のハードルが下がってしまったのです。ただ内視鏡というのは外科手術と同じように一朝一夕でできるほど簡単なものではありません。みなさんはけがをした時に内科を受診しますか?餅は餅屋ということわざがありますよね。
ただでさえ操作性が悪い経鼻内視鏡を扱うのには経口内視鏡を十分に使いこなせる技術を持っている事が大前提になります。その辺の専門的な判断は非常に難しい所ですが、十分な経口内視鏡の施行経験がある医師はほぼ日本消化器内視鏡学会の指導医(注:通常の専門医であれば、学会入会後5年以上経過して筆記試験に受かれば取得は可能)を取得している事が多いので、指導医かどうかを確認してみるのが良いでしょう。それを確認するのが難しいようなら、経鼻内視鏡をメインで施行していても経口内視鏡の経験豊富な医師であれば、経口内視鏡も常備していることが多いので、その施設に経口内視鏡があるかどうかを確認してみるのも良いでしょう。